筬羽整形
H15年6月~ 豊田陸雄さん、豊田義雄さんより実技指導を受ける
【原材料】 真竹(孟宗竹) *破竹は軟らかいので筬羽には適さない。
厚み:約1分 幅:約5分 長さ:並三ツ・並四ツ・並五 ・長三ツ・長四ツ
(並:鯨尺2寸1分の筬羽がその枚数分取れる長さ)
(長:鯨尺2寸4分の筬羽がその枚数分取れる長さ)
*苛性ソーダを入れて煮てある。
500本=1束(並五は1束400本) 12束=1表
* 男性で1日10束分を削った。(10,000回)
* 1ヶ月で3~4.5表
【工程】
1. 竹あみ
2. 竹割り
3. 荒引き
4. 幅取り
5. ニバン引き
6. 皮取り
7. 上引き
8. 羽揃え
9. 羽切り
1.
竹あみ:材料が届いたら、細い竹で長さ150cm位の簾状に編む。それを皮を上にして、昼夜・天候を問わず、川の土手に出しっぱなしにして2~3週間乾燥させる。
竹筬
2.
竹割り:乾燥したままの状態で、先(細い方)から二つ割で半分に割る。割り終えたら組み違えておく。
緑=皮
赤=削った面
図2
割り方
i. 乾燥した竹の先(皮が上)を二つ割の刃に当て、二つ割のもち手を支点として親指で押さえ竹の元の方を押し上げ割目を入れる。
ii. 割って行く時は、そのまま親指で竹を押さえながら元のほうを押して二つに割る。
iii. 割り終えたら、割った面がそろうように組み違えておく。
* 荒引きする時、厚みの薄い方から正直台の刃に入れる。
(上4本):二つ割にした竹
(下2本):二つ割をする
前の竹
割るための道具
3.
荒引き:正直台で鯨尺2分マスに6枚分入る厚さ(約1.26mm)に身の方を削る。
金属の鯨尺2分マス
削り方
i. 前もって二つ割りした竹を水に2~3日浸けておく。(湯なら1昼夜)
ii. 正直台をセットする。(刃の調整方法参照)
iii. 二つ割りした竹を身の方を上にして厚みの薄いほうから斜めに正直台の金板と銑の刃の間に入れ、引き始めたらすぐに“メメタ”の所まで持って行き、気持ち上に持ち上げるようにして一気に削る。最初全長の6割分を削る。
iv. 持ち替えて残った部分も削る。残ったほうは、最初から削った部分を“メメタ”の所まで入れ全体が同じ厚さになるように削る。
v. 削り終わった竹は、方向を揃えておく。(二つ割した面が揃う)
* 1,000本ほど引いたら刃をずらす。
* 竹で指を痛めやすいので、親指と人差し指に布を巻くとよい。
* 竹の厚みは、正直台の爪で調節し、金に鯨尺2分の溝がありそこに削った竹を入れて決める。
* 多少の厚みのムラは気にしなくて良い。
4.
幅取り:幅取り台で幅(曲尺2分=6.06mm)を揃える。
削り方
i. 竹の長さの手前から4割ほどの位置で、皮を上にして、二つ割りした方でない古い面を刃のほうに斜めに入れ、押さえの棒で押さえながら引き始める。
ii. すぐに竹が台に着き幅が決まるので、幅揃えの金棒とガイドの金棒に竹を添わせて引く。
iii. ひっくり返し残りを引く。(皮が下になる)
* 引き終わった竹は、もう方向は気にしなくてもよい。
幅取りの様子
幅取り台
5.
二番引き:筬の基本。鯨尺2分マスに9枚分入る厚さ(約0.84mm)に身の方を削る。
* 皮をとると七〇の筬になる。(厚みのムラがないように引く)
* 竹の両端・真中の厚み、幅の両側の厚みを揃える。(竹を引き出す角度によって竹の両端と真中の厚みが違ってくるので注意する。また、竹の皮が、金板に当たる位置が幅の中央にくるように銑の刃を調整する。)
* 500~600枚引いたら刃をずらす。
6.
皮取り:皮のほうを鯨尺2分マスに14枚分入る厚さ(約0.54mm)に引く。
* 正直台の刃を身を引くときより少し立てる。(あてばを荒引き1枚分くらい厚くする)
7.
上引き:鯨尺2分マスに24枚分入る厚さ(約0.315mm)に身の方を引く。(千二の筬の羽の時)
* 筬羽の厚みが非常に薄いものは、もう1度身の方を仕上げ引きする。
鯨尺2分マス入り本数の目安
表1
筬の品名 |
荒引き |
二番引き |
皮取り |
上引き |
上引き仕上げ |
五○ |
5 |
7 |
10 |
|
|
六○ |
5 |
8 |
12 |
|
|
七○ |
6 |
9 |
14 |
|
|
八○ |
6 |
9 |
16 |
|
|
九○ |
6 |
9 |
14 |
18 |
|
千○ |
6 |
9 |
14 |
20 |
|
千○八十 |
6 |
9 |
14 |
22 |
|
千百二十 |
6 |
9 |
14 |
23(固く) |
|
千二 |
6 |
9 |
14 |
24 |
|
千三 |
6 |
10 |
16 |
26 |
|
千四 |
6 |
10 |
16 |
28 |
|
千五 |
7 |
11 |
14 |
24 |
30 |
千六 |
7 |
11 |
14 |
24 |
32 |
千八 |
7 |
11 |
14 |
24 |
36 |
8.
羽揃え:筬に必要な羽の枚数を揃える。(表2 筬の種類と羽数「羽揃えの1束の本数」参照)
揃え方
i. 上引きした羽を半日ほど陰干しする。(羽切りする時ほんの少し湿り気があるほうがよい)
ii. 両方の手のひらに筬羽の端を持ち、やさしくゆすって身と皮の方向を揃える。(身のほうが上に揃う)
iii. 左手で裏表そろった羽を持ち、右端を膝に当て、右手の親指と人差し指で摘み上げるようにして並べる。(竹を少したわませながらすると並べやすい)
iv. 左手に並べた筬の羽を皮の方が見えるように持ち、扇のように広げ、羽の汚れ・割れなど不良なものを抜く。
v. 羽切りの筬の必要枚数を数え(5枚づつ)、糸で括っておく。(千二の筬=78枚)
* 括り方は、羽切りした後の括り方と同じ。
羽を並べる
羽揃えする
9.
羽切り:羽切り台で、羽揃えした束を筬の外天地+5厘の長さに切る。
* 外天地の長さ 大島:鯨尺2寸
絹 :鯨尺2寸1分
綿 :鯨尺2寸4分
羽切りの手の位置
切り方
i. 最初、皮のほうを上にして糸で束ねたほうの端を少し切り落とす。
ii. 筬の羽の束を 刃を下ろす所のガイド・長さを揃える台・その間にあるガイドの3点に、きっちり揃え 左手で長さを揃える台のほうに束を押しながら、右手人差し指で筬の束が崩れない様に押さえ、掌に力を入れ一気に切る。(筬の羽の束がきっちり揃っていないと羽割れの原因となる)
iii. 切ったらすぐ、割れた羽がないか、羽の角に左親指先を当てペラペラめくって調べる。悪い羽があったらそれを除き「たし羽」する。この時、切れていない羽は、左手の人差し指と中指の間に挟んで持つ。
iv. 揃えた筬羽は、切れたたばの半分を上下ひっくり返し(皮の向きは変えない)、台の釘の間に皮の方を左(羽切りする方)に揃えて置く。羽揃えした筬羽から4回分切り取れる。(並四ツ)
v. 8回切り終えたら、2たば分を1つに糸で絡げ1束にする。この時皮の方が判る様にVの字に広げて糸を絡げておく。
vi. 羽切りした1束を16個分たばねておく。
* 16束分を1本の金箱(金がまち)に入れる。4束分で1本の筬になる。
* 羽切り用の刃は、銑が正直台で使えなくなった物を刃の角度を小さく研ぎ出して使っていた。
* 刃を止める所は、ゆるみがあるので布を巻きツメをかう。
* 長さを決める台は、ほんの少し前に傾ける。
割れた羽がないかの確認
羽切り台と束ねた羽
筬の種類と羽数
表2
筬の品名 |
2分マス入本数 |
1丁4枚詰羽数本数 |
羽揃えの1束の本数 |
五○ |
10 |
1000 |
33 |
六○ |
12 |
1200 |
39 |
七○ |
14 |
1400 |
46 |
八○ |
16 |
1600 |
53 |
九○ |
18 |
1800 |
59 |
千○ |
20 |
2000 |
65 |
千○八十 |
22 |
2160 |
70 |
千百二十 |
23(固く) |
2240 |
73 |
千二 |
24 |
2400 |
78 |
千三 |
26 |
2600 |
84 |
千四 |
28 |
2800 |
91 |
千五 |
30 |
3000 |
99 |
千六 |
32 |
3200 |
104 |
千八 |
36 |
3600 |
117 |
2005.3.24 文章:関
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