文化庁直接の応援をいただけるようになり2年目に入ります。最近、残念な結果なのですが、その結果から見えてくる重要な事柄がありました。
以前に試織を依頼していた試作竹筬のうち、筬羽割れが生じた竹筬3枚が里帰りいたしました。1枚目は2008年8月納品の手績み苧麻使いの宮古上布の16羽/cm(使用筬羽千三)の竹筬A。2枚目は2010年10月納品の絹糸双糸、夏物着尺の60羽/鯨寸(筬羽千三)の竹筬B。3枚目は2011年8月納品、手紡ぎ木綿で4本通しの高密度の小倉縞、12羽/cm(筬羽千百)の竹筬C。竹筬BCの筬羽引きは同一の会員、Aは別の会員の製作、仕上げと組み工程はすべて会員の小嶋さんです。
この3枚を見比べると、4年前の精度基準、2年前、1年前の精度基準、そして昨年10月より文化庁直接の支援と要望を受けてからの精度基準がまったく違うことが実感できます。羽割れで大変な迷惑を掛けたことになるのですが、確実に進歩し、原因を検証でき、前進するための貴重な資料になっております。Aはその当時の会員の技術からみれば一番進んだ技術での竹筬、今の基準ではまったくの経験不足と甘い精度基準による竹筬製作でした。BCは少しの経験不足、そして皮の取りすぎの「身筬」、そして一番問題の竹材の良否の結果だと考えています。
11月13日より18日までの横浜・シルク博物館での「第8回試作竹筬と織布展」でその成果をご覧ください。今年度の目標は試作竹筬の「試作」が取れるよう研修と研究を重ね、前進したいと思います。
(2012.08.20 下村輝 記)
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